働き方 仕事の未来 人財 週休3日でも残業なしで増収増益 短時間で確実に成果を出す働き方とは

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2023.06.15
週休3日でも残業なしで増収増益 短時間で確実に成果を出す働き方とは

中小企業から大企業まで、多くの企業の働き方改革を支援するクロスリバーでは、役員を含めた約40人の全従業員が週休3日や完全リモートワーク、複業必須といった新しい働き方に取り組んでいる。
短い時間で効率的に、なおかつ収益を落とさずに働くにはどうすればいいのか。完全リモートワークかつ複業をしていても、会社へのエンゲージメントを高める働き方は可能なのか。
クロスリバー代表取締役社長の越川慎司氏に話を聞いた。

働き過ぎで2度の体調不良自身の経験から新しい働き方を模索

越川氏が代表を務めるクロスリバーは、全従業員が週休3日、週30時間労働、完全リモートワーク、複業必須、1日7時間以上睡眠を実行している。自社での実践を基に、顧客企業の働き方改革を支援しており、これまでに800社以上との取引実績がある。

越川氏が現在の働き方を取り入れた背景には、自身の苦い経験がある。通信大手に勤務していた29歳の時、過重労働によりうつ病になったのだ。

「もともと仕事が大好きなタイプで、集中して仕事に取り組むことが楽しかったのですが、睡眠時間を削って働いた結果、靴の履き方もわからなくなるような状態になってしまいました」

その後、米国に渡りマイクロソフトに転職するも、30代で再び過労により体調を崩してしまう。この経験から「いくら仕事が楽しくても休息は必要なんだ。であれば、短い時間でも成果を出せる働き方を実現できないか」と模索するようになり、2017年にクロスリバーを創業した。現在、同社では、タイ、米国、フランスなど各国に点在するメンバーが時差をうまく活用しながら働いている。

最初から成功を目指さない
成功のための実験を続ける

では、短時間で成果を出す秘訣とはどういったものか。まずは、「最初から成功を目指さない」ことだと越川氏は言う。

「クロスリバーで実践している働き方は、永遠の行動実験だと考えています。多くの企業では失敗したくないという思いから新しい働き方の導入に躊躇してしまう。当社では一足飛びに成功を目指すのではなく、学びを得ることを目的にスタートしました。学びの先に成功があります。まずはローリスク・ローリターンで行動実験を続けることが大事です。やってみて、改善していけばいいのです」

いきなり本格導入するのではなく、最初は月1回などのトライアルからスタートしてみるのでも効果的だそうだ。ただし、部署単位などではなく、経営者も含めた全従業員で導入した方がうまくいきやすいという。業務を止めないためには、部署内でローテーションしながら休む仕組みを作ることで、業務を属人化させず、フォローし合えるようになる。

「これによりチーム力がアップしますし、介護や育児をする社員も働きやすくなります。実際、育児中の社員が時短勤務をしなくても働けるようになったという会社もあります」

無駄を排除し時間単価アップ
ポイントは従業員の腹落ち

週休3日にして働く時間を減らせば、売上や利益は下がるだろうと考えるのが一般的だ。ところが、クロスリバーは創業以来、増収増益を続けている。労働時間を減らしても売上を落とさない方法は3つあるという(図1参照)

図1クロスリバーにおける労働時間を減らしても売上を落とさない方法

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無駄を徹底的に
排除する

時間単価を
上げる

新規事業の創出

無駄に気付いて改善したり、やらないことを決めたりすることで、限られた時間を有効に使う

成果を出し、顧客との信頼を築くことで、単価上昇やアップセル・クロスセルにつなげる。複業の知見も生かせる

小さくスタート。労働時間を減らした分、新規のアイデアを生かし、売上利益に直結させる

1つ目は、無駄を徹底的に排除することだ。無駄を見つけるためには、週1回など定期的にスケジュールを振り返ることが有効だという(図2参照)。

図2無駄に気付くために、振り返りの時間を持つ

1時間の会議、45分でできたんじゃないかな? パワポの資料、もっと短くまとめた方が顧客に響いたかも? 週に1回、スケジュールを振り返るだけ。 特に社内会議、資料作成、メール関連でダイエットできる可能性が高い

「ただ予定を振り返るだけでいいんです。無駄だと思って仕事をしている人はいないでしょうけれども、振り返ってみると『これは無駄だったかな』というものが見えてきます」と越川氏。

例えば、あの会議はもっとスピーディーにできたのではないか、パワーポイントの資料はもっとページを減らしても伝えられたのではないかなどの気付きを得られる。気付いたことを改善していくことによって、大幅に無駄を削減していけるという。

2つ目が、時間単価を上げていくことだ。クロスリバーでは社員の職種を「アグリゲーター」と呼び、コンサルティングするだけでなく、短い時間で情報と人と知見を提供し、ビジネス構築を支援している。こうして成果を出し、顧客との信頼関係を築ければ、おのずと単価は上がっていく。

3つ目は、新規事業の創出だ。

「新規ビジネスは少ない人数で始められ、そこで生み出した売上と利益は、純粋に現在の業績に積み上がりますから、非常に効率的です」

週休3日を導入するうえで一番のハードルとなるのは「固定観念と常識」だと越川氏は指摘する。経営者の覚悟も必要だが、最も重要なのは従業員が腹落ちするかどうかだという。

「トップダウンでやらされるのではなく、自分たちにメリットがあるからやろうと思わなければ、よい形で浸透しません」

情報共有の前に感情共有
リアルなつながりも大事にする

週3日勤務、完全リモートワークの働き方で、しかも複業もするとなると、自社へのエンゲージメントが下がるのではないだろうか。実際、「どれだけITツールでコミュニケーションをとっても、帰属意識を高めることは難しい」と越川氏はこぼす。各社のオンライン会議におけるビデオオンの割合は21%で、内職率は41%にも上り、オンラインコミュニケーションの場での参加意識の低さが伺える。そこで考えた解決策が、情報共有の前に感情共有することだという。

「オンライン会議で情報共有に入る前に、わくわくするとか最近ちょっとつらいといった感情をまずは共有するようにしています。リモートメインの時代だからこそ、対面の価値が上がりました。だからこそ、対面では何をやるべきかを見極め、定期的にリアルで会う場を作っていき、対面で生まれる価値を生かしています」

複業や介護・育児、趣味
学び直しに時間を使う

週休3日の働き方には、さまざまなメリットがある。睡眠時間をしっかり確保し、健康を維持できるだけでなく、趣味を充実させ、複業でスキルの幅を広げられる。越川氏自身も、大学でロジカルシンキングや構造化思考などを学び直しているという。

「学んだ知識は3年ほどで陳腐化していきます。今やリスキリングは全世代において必要なことです。いかに時間をあけずに楽しみながら学び続けられるかが重要です。そういった時間を確保するためにも、週休3日は効果的な働き方です」

越川氏が掲げる働き方は、あくまでも目的ではなく手段だ。

「ぜひ目指していただきたいのは、効率と効果の両立です。労働時間が減ったから仕事の成果が出なくてもいいということではなく、短時間で成果を出したうえで個人の時間も有効に使うという両方を追い求めてほしいのです。そのために、小さな行動実験を積み重ねて、効果効率を上げるテクニックをご自身で身に付けていただきたいと思います」

Profile

越川慎司氏
株式会社クロスリバー代表取締役社長

国内外通信会社での勤務を経て、2005年にマイクロソフト米国本社に入社。のちに業務執行役員としてExcel、PowerPointなどの事業責任者を歴任。2017年に株式会社クロスリバーを創業。世界各地に分散したメンバーが週休3日・リモートワーク・複業(専業禁止)をしながら800社以上の働き方改革を支援。複業として株式会社キャスター執行役員、各企業・団体の顧問。『AI分析でわかったトップ5%セールスの習慣』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。

越川慎司氏