インタビュー・対談 人財 働き方 デジタルネイティブ世代座談会 ~同世代でくくるのではなく、一人ひとり違うことに気づいてほしい~

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2018.10.04

1995年以降に生まれた若者を指す「デジタルネイティブ世代」。スマートフォン(スマホ)などのデジタルデバイスを巧みに使いこなし、日常的にSNSでコミュニケーションを取るなど、上の世代とは異なる特性があるといわれている。とはいえ、実際はどうなのだろうか。学生起業や学生団体の設立などを経験し、すでに社会に一歩踏み出している「デジタルネイティブ世代」の3人に、デジタルデバイスやSNSとの付き合い方や理想の働き方について、語ってもらった。そこから見えてきたのは、同じデジタルネイティブ世代でも、一人ひとり異なる多様な姿だった。

Profile

米山維斗さん
ケミストリー・クエスト株式会社 代表

1999年生まれ。小学校3年生、10歳の時に原子の結合をテーマにしたカードゲーム「ケミストリー・クエスト」を考案し、小学校6年生、12歳の時に商品化と同時に起業。日本初の小学生社長として注目を浴びた。筑波大学附属駒場高校を卒業後、現在は志望大学を目指して浪人中。

大山 友理さん
学生団体 Women's Innovation 代表

2000年生まれ。津田塾大学1年。中学生の時に父親が病気で倒れた際に、専業主婦の母親の働き口がないことを痛感し、仕事と子育てを両立できない日本の現状に問題意識を抱く。高校3年生の時に、女性の多様なロールモデルを発信する学生団体「 Women's Innovation 」を立ち上げる。現在、団体は女子高生、男子高生、女子大生の計22人で活動中。

土井皓介さん
合同会社 NEXCITE 代表

1997年生まれ。東京大学教育学部4年。大学在学中にNEXCITEを起業。「好奇心」と「夢」にフォーカスした異才の家庭教師のマッチングサービス「DREE(https://dree.jp/)」を2018年にリリース。アデコグループのグローバル・インターンシップ・プログラム「CEO for One Month」2017年度日本代表に選出され、1カ月間のCEO業務を体験。

3人は1995年以降に生まれた「デジタルネイティブ世代」に当たるわけですが、いつ頃からデジタルデバイスに接してきたのでしょうか?

土井

パソコンは小学生の時から使っています。好奇心というより、「ただ、そこにあった」から始めました。高校時代はガラケー(ガラパゴス・ケータイ)、大学進学時にはじめてスマホを購入。高校の時は受験勉強に集中したかったので、スマホを持ちたいとは思いませんでしたね。

米山

スマホを買ってもらったのは中学1年生の時。iPhone4Sが発売され、一般に普及し始めたタイミングだったと思います。パソコンは小学校に入る前から使っていましたが、ワードとエクセルを使い始めたのは小学校に上がってから。後に商品化することになったカードゲームの構想をまとめるのに、マス目があって結合できるエクセルは便利でした。

大山

スマホデビューは、中学3年生の終わりです。それまでは、学内でも少数派のガラケーでした。スマホが欲しくて欲しくて、ようやく親に購入してもらった時はうれしかったですね。パソコンは小学生からで、最初はインターネット検索のみ。中学生でパワーポイントやワードを触るようになりました。

では、SNSはいつから使い始めましたか?また、現在はどのように使っていますか?

大山

インスタ(インスタグラム)はスマホを購入してもらって、すぐに始めました。写真が好きなので、撮影の仕方を工夫して投稿。友だちに褒められるのがうれしかったですね。最近友だちとの連絡は、インスタのダイレクト・メッセージかLINEが多いです。インスタは写真から会話が始まるので、コミュニケーションのハードルが低いと感じています。先日も、インスタのやりとりを通じて仲良くなった子とランチに行きました。

このようにいろいろなツールでやりとりしているので、数時間放っておくと、連絡の通知が100件近く溜まっていることも。返しても返しても終わらなくて、時々疲れます(笑)。そのため、着信音や通知音を消音にする「おやすみモード」を活用して、たまにチラッと見て、緊急のものだけを返信しています。また、まわりでもSNSに疲れている人が多いのか、「機内モード」にして使っている人もいますね。同世代でくくられることが多いけれど、SNSとの付き合い方ひとつとってみても、人によって違うなと感じます。

土井

本当に人それぞれだと思います。LINEは高校生の頃から使っていて、インスタ、ツイッターとフェイスブックは大学に入ってから始めましたが、起業してSNSの活用方法が変わってきました。仕事とプライベートで完全に分け、仕事はもっぱらビジネスチャットとフェイスブックのメッセンジャーとメール。LINEやインスタはプライベート用にしています。仕事での外部とのやりとりはメッセンジャーを活用しています。返信を「いいねボタン」で済ませられるのでラクなんです。
また、僕もスマホの「機内モード」はよく使っています。仕事に集中したいときは便利。集中する時間は定期的に確保したいので、そんなときは「機内モード」にしてカバンの中に入れています。

米山

スマホは中学1年生から持っていますが、2人のようにいろんなSNSを使ってはいません。強いていえば、ツイッターを匿名でやったり、親しい友人とチャットするぐらい。ツイッターは匿名でやっていますが、趣味の話しかしていません。匿名にしたのは、社会に公表する話ではないから。まわりも匿名の人が多い印象です。興味のない話を相手のタイムラインに流すことは避けたいのか、アカウントを複数持って使い分けているように思います。

もしスマホがなかったら、どんなところが今の生活と変わっていたと想像しますか?

土井

2つあると思っています。1つめは得られる情報が少なくて、もっと視野が狭かったのではないかと思います。2つめは起業後の話ですが、今のように固定のオフィスを持たずリモートで業務を進めるという働き方が実現できなかったと思います。もしガラケーだけだったら、業務効率がかなり落ちていたでしょうね。

大山

スマホがなかったら、こんなに素早く情報を得られなかったと思います。また、関わるコミュニティも少なくなっていたのは確実。自分と興味関心が近い友だちや仲間に出会えているのは、間違いなくSNSのおかげです。SNSがなかったら、学校以外のコミュニティに属することはできなかったでしょうし、面白いと思う人とつながる機会も限られていたように思います。高校3年のときに設立した学生団体「Women's Innovation」のメンバーが今、二十数名に増えているのも、他校の人たちがSNS上で見つけてくれたからです。

とはいえ、便利さを実感する一方で、SNSだけで友人作りが完結してしまうことには疑問を感じています。ツイッター上に同じ大学に進学する人たちのグループがあって、そこに入っていないと、入学後に友だちを作りづらいそうです。大学によっても傾向が異なるようですが。出会いが限定されてしまうのは、もったいないなと思います。

米山

どこにいてもどんな状態でも、「何だろう」と疑問に感じたことをすぐに調べられるのがメリットだと感じます。昔であれば書物の文献で調べていたところを、ネットで検索できるようになったことによって、時間を大きく削減できる点で、とても便利になったのではないでしょうか。

多くの職場では、メールや電話というコミュニケーションツールがまだ一般的ですが、SNSに慣れている皆さんは、どのように考えますか?

米山

僕自身、仕事でのやりとりは電話やメールがメインのため、問題なくなじめると思います。ただ、社会人になったときには、自分の権限が及ぶ範囲内で、便利だと思うツールをどんどん使用していきたいです。

大山

今でも、急ぎのときは電話をすることがあります。メールに関しては、学生団体を運営しているため使用することが少なくないのですが、書くたびに「メールは面倒だな」と感じます。やりとりするなかで、相手もSNSを使用していることがわかれば、そちらに移行することも多いですね。

土井

仕事でメールは使いますが、電話は全くしません。だから、基本的に出会っても、電話番号は交換しませんね。名刺にも電話番号を書かなくてもいいと思っています。SNSでのやりとりのほうが、「いいねボタン」で済み、効率的ですから。

ワーク・ライフ・バランスを重視する若い人が増えていると聞きますが、理想の働き方はありますか?

米山

浪人中なので、大学卒業後のイメージが持ちづらいですが、将来は専門職に就きたいと考えています。理想は、大学で「交通システム」を学び、それを生かせる職業に就くことですが、小学生のときに起業したカードゲームの事業も継続したいです。そのほかにもやりたいことが複数あるため、どのようにやりたいことすべてをうまくやるかが課題になりそうです。ただ、やりたいことをやるためなら、なんでも乗り越えられると思っています。

大山

インターンシップを経験し、働くってこんなに大変なんだと実感する毎日を送っています。10時から19時までインターンシップがある日はヘトヘトで、友だちと会うこともできないほど。世の中のワーキングマザーは、仕事をして、子どもの面倒をみて、家事をしてと、本当に大変な日々を送っているのだと実感しています。将来、自分が同じように仕事と子育てを両立できるか考えると、生活に重きを置くワーク・ライフ・バランス型とか、仕事にすべてを捧げる生き方のいずれかを選択する二者択一ではなく、人生のなかに仕事がある「ワーク・イン・ライフ」の形が理想的だと考えています。この理想のワーク・イン・ライフを実現するためには、起業するのと企業で働くことのどちらが良いのか、迷っているところです。こうして迷えるのは、働き方が多様化している今だからこそなのだと思います。そうした意味では、ありがたい時代なんだなと実感しています。

土井

僕はワーク・ライフ・バランスを重視するというより、もし仮に会社勤めをするとしたら、20代のうちはガツガツ働き、土日はたくさん遊んで、メリハリのある生活がしたいですね。それが自分にとっての心地良いバランスなのかな、と。とはいえ、今は企業を経営しているので、やりたいことを実現するために「時間という資源」をどう配分するか、戦略的に考えていかないといけない。だから、今は土日も関係なく仕事にフォーカスする時期だと思っています。

==デジタルネイティブ世代をどう見る?コンサルタントの視点==

デジタルデバイスが当たり前に存在しているなかで多感な学生時代を過ごし、その良し悪しも含めて冷静に分析して使いこなしているデジタルネイティブの特徴が顕著に出ていると感じました。 入学前からツイッターで友人を作ったり、2つのアカウントを使い分けたりと、個人と公人をバーチャルとリアルの両面で当たり前のように使い分けしていることなどからもうかがい知れます。 また、興味あることについては非常に前向きで労力をかけることも厭わないなど、この世代の人たちに活躍してもらうために企業側が把握しておくべきポイントや対応策はいろいろとあるようにも思われます。

Profile

田中公康氏
デロイト トーマツ コンサルティング合同会社
ヒューマンキャピタルディビジョン HRトランスフォーメーションユニット
シニアマネジャー

外資系コンサルティングファーム、IT系ベンチャー設立を経て現職。直近では「デジタル人事(Digital HR)」領域のリーダーとして、生産性・エンゲージメント向上に向けた働き方改革、デジタル活用によるイノベーション創出に向けた組織・人財マネジメント変革などのプロジェクトを多数手がけている。また、HRテクノロジー領域の新規サービス開発にも従事。著書『働き方改革 7つのデザイン』『ワークスタイル変革』等。その他、専門誌への執筆や講演等の実績多数。