人財 組織 働き方 "チームビルディング"を成功に導く4段階 タックマンモデルとは

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2019.06.27

近年、組織を活性化させる手法としてチームビルディングに注目が集まっている。リーダーとメンバーの理想の関わり方、そしてチームビルディングの重要性と実践方法について、一般社団法人日本チームビルディング協会代表理事の齋藤秀樹氏に聞いた。

「指示・司令」は、旧来型のリーダシップ

「『あなたがイメージするリーダーの役割を図で描いてください』。リーダー向けの研修でこう質問すると、多くの人は上司の下に部下がいる上下関係の図(図1参照)を描きます」(齋藤氏)。

図1 旧来型のリーダーとメンバーの関係性
図1 旧来型のリーダーとメンバーの関係性

このように、リーダーはメンバーを「牽引する人」と考え、リーダーになることを敬遠する個人はいまだに多い。とはいえ、メンバーの労働観には変化が見られるという。今の若手は、リーダーの『指示・司令』で動くようなチームを支持しなくなってきているのだ。

図2のように、上司が部下に「指示・司令」をして、部下が上司に「報告・連絡・相談(ホウ・レン・ソウ)」をするチームマネジメント法は、すでに機能不全を起こしているといってもいい。

図2 旧来型のチームマネジメント法
図2 旧来型のチームマネジメント法

「強いリーダーが機能していた高度成長期のような時代は、もともとのモチベーションが高いメンバーでチームが構成されていました。一方、現代はモチベーションが高いメンバーだけが集まっているわけではありません。成果につながる"やるべきこと(DO)"だけ押しつけてもチームは機能しません」

「なぜこの仕事をこのメンバーでやるのか(ミッション)」、「どこを目指すのか(ビジョン)」など、「このチームがどうありたいのか」という"BE視点"をチーム内で共有しなければ、チームが活性化しない。

理想は、メンバー全員がリーダーシップを発揮できる状態をつくること。そのためにチームビルディングが重要になる。心理学者のタックマンが提唱したタックマンモデルを軸に紹介する。(図3参照)

図3 チームビルディングの4段階(タックマンモデル)

第1段階 形成期(Forming)

同じ船に乗っていると自覚する時期

組織の意向で強制的に集められた場合、メンバーは「個人商店の集まり」と考えたほうがいい。個々の関心や価値観はバラバラ。たとえるなら、同じ船に乗ってはいるが、Aさんは目的地に向けて一生懸命に漕いでいるが、Bさんは目的地もよくわからず漕いでいる、Cさんはやる気がなく立っているだけ、というような混沌とした状態だ。

この段階で重要なのは、チームのミッションやビジョンを共有したり、お互いの理解を深めていくなかで、チームの一員であるという自覚を芽生えさせることだ。

第2段階 混乱期(Storming)

考え方のズレから対立が生まれる時期

お互いを徐々に理解し始め、自己開示が進むが、それが発端となり、チーム内でのやり方の違いがあらわになってくる。「私だったらこうするのに」というアイデアや意見をいえる環境は好ましいが、発言によってチーム全体の雰囲気が悪くなってしまう場合もある。

対立を生まないようなコミュニケーションを心がけたり、問題が出てきたときにトップダウンで解消しないようにするなど、メンバーをより深く理解するための丁寧な取り組みが必要になる。

第3段階 規範期(Norming)

チームへの貢献意欲や当事者意識が芽生える時期

メンバー同士の理解が深まり、自己開示だけではなく他者受容が進んでいく。信頼関係や相互支援の意欲が高まるため、勉強会が自主的に開催されるなどの積極的な取り組みが見られる。

メンバーの自尊と自信の2つの要素を高めると、より前向きに関わるようになる。自尊は「あなたがチームにいるだけでうれしい」と伝え合うことから生まれ、自信は小さな成功体験の積み重ねから生まれる。こうして、メンバーがさらに前向きにチームに所属するようになると、能力とともに、モチベーションが高まっていく。

第4段階 達成期(Performing)

目標以上のチャレンジ意欲が生まれる時期

各々のメンバーがリーダーシップを発揮するようになると、目標達成だけではなく、達成することにより得られる仲間との一体感に価値を見いだしていくようになる。また、メンバーのチャレンジ意欲が旺盛になるため、リーダーが設定する目標では物足りなくなり、チーム内から「私たちならなんでもできる」「このチームだったら何が起きても大丈夫」という言葉が聞かれるようになる。

このような状態のチームには、リーダーが細かく指示をする必要はない。むしろ、段階的に権限を委譲していくことが求められる。それが、メンバーをエンパワーさせ、自立を促すことにつながる。

大事なのは、自分たちにとって良いチームをつくること

チームビルディングにおいて、タックマンモデルを取り入れることは効果的だ。だが、齋藤氏は次のように指摘する。

「画一的な組織を追い求めるのではなく、チーム全員で自分たちにとって"良いチーム"とは何かを、自分たちの頭で考えてつくり上げていくことが大事です。100チームあれば、100通りのチームの形が存在するのです」
良いチームにゴールはない。常に変化変容していくものなのだ。

Profile

齋藤 秀樹氏
一般社団法人日本チームビルディング協会 代表理事
アクションラーニング ソリューションズ代表取締役

富士通、SIベンダーなどで人事・人材開発部門の担当および人材開発部門責任者、KPMGコンサルティング(現Bearing Point)の人事コンサルタントを経て、人材組織開発コンサルタントとして独立。
米国で直接アクションラーニングコーチ養成プログラムを受け、GIALジャパン設立(現:NPO法人日本 アクションラーニング協会)に参加、ディレクターに就任。
その後、アクションラーニングソリューションズ代表取締役に就任。