VOL.45 特集:ダイバーシティを実現させる「イクボス」という経営戦略

Topics イクメン・イクボスの仕事術

仕事も家庭も信頼関係がベース 部下の時間当たりの成果を評価するスキルも必要

厚生労働省認定第6回「イクメンの星」に選ばれた越智聡氏が2カ月の育休をとったのは、念願のプロジェクトマネジャーに昇格した直後だった。

「僕は入社時からキャリアアップ志向で、6年でマネジャー昇進することを目指し、実現しました。プロジェクトの繁忙時期は連日遅くまで必死で働いていましたね」

だが、2人の子どもの育児をほぼ1人で行っていた妻から突然、「この生活がいつまで続くの?」と涙ながらに訴えられたことが転機となった。「上司に相談したところ、育児休暇を勧められました。当時はまだ男性コンサルタント職の育児休暇の取得例がなかっただけに、キャリアへの影響が不安でした。でも、自分は何のために働いているのかと考え、早い出世よりも家族が第一だと、大きく価値観が変わったのです」

しかし復帰後、再び仕事に没頭する日々に戻ったため、危機感が募り、2年間の時短勤務を申請。保育園にお迎えに行く18時から逆算して業務を組み立てる働き方に変えた。だが、プロジェクトマネジャーという管理職だけに、部下や顧客との打ち合わせが頻繁にあり、これが5時以降になりやすい傾向にあった。

アクセンチュア株式会社
テクノロジー コンサルティング本部
モビライゼーショングループ マネジャー
越智 聡 氏

「自分が会社にいる間にこまめに部下の仕事をチェックし、早めにイメージの共有をしています。また、お客様との会議は、自分がスケジュールの調整役を買って出て、できるだけ早い時間帯に設定するようにしています」

それでも夕方以降の仕事はどうしても発生する。そこで、欠かせないのが上司や同僚に"お願いする"こと。

「一方的な"お願い"は通用しません。日頃から助け合い、信頼関係を築いておくことが大前提です」

互いの状況を把握するために、ランチタイムにはプライベートについても話し合う。以前のように夜からの外食には顔を出せない分、ホームパーティに同僚を招いて家族とともに過ごしながら、自然にチームワークも深めている。

越智氏は、時短勤務終了後も繁忙期以外は残業をしないようになった。そのため、部下からも越智氏をロールモデルに早く帰れるようになったと喜ばれ、結果的にチーム力もアップした。

「これからは多様な働き方をする部下が増える時代。そんな組織をうまくマネージするには、部下の多様な考え方を理解するためにも日々の細かいコミュニケーションが不可欠です。挨拶や感謝の言葉はもちろん、悩みを抱えていそうなら声がけをする。また、今後は時短勤務者も増えるため、部下の時間当たりの成果をしっかり評価するスキルも求められます」


イクボスの仕事術 残業しない日をチームで決める ミーティングは率先して調整役を努め、夕方にかからないようにする こまめに部下に声をかけて現状を把握。早い段階でイメージを共有する 日々のコミュニケーションを大切にする 部下が限られた時間の中で生産性の高い仕事をしているかどうかで評価する 情報は抱え込まず、常に共有する

残業削減については、「毎日1時間減らそう」ではなく、強制的に仕事終了時間を決めてしまうのがコツだという。逃げ場がなくなると、時間内で終わる方法を真剣に考えるからだ。

「仕事はずっと続くが、育児はそのときしかない」と、越智氏。8歳の長男が自立していく今、実感しているという。「最初からワークライフバランスを求めるのではなく、まずは会社に価値を与えられる仕事力と周囲との信頼関係を築くこと。そのうえで、育児などプライベートも充実させれば、家族や社外の友人とも信頼関係ができて素晴らしい人生になると思います」

小さな努力を積み上げ、日ごろからよい関係性を築いておくことこそ、仕事にも家庭にも不可欠な要素なのかもしれない。

profile
2004年、アクセンチュア入社。入社後、最短の6年目でマネジャーに昇進。ハードワークが続いていた折、ご家族のひと言がきっかけで、育児休暇を取得。2013 年『第6 回イクメンの星』(厚生労働省・イクメンプロジェクト主催)に輝く。イクメンを経て、現在はイクボスとして活躍中。