VOL.52 特集:インターンシップが新卒採用を変える!?

Case Study 企業と学生双方の理解を深め、新卒社員の離職が実質ゼロに
メルセデス・ベンツ日本

新卒採用の最終選考がインターンシップ

インターンシップを新卒採用の選考に直結させている日本企業は、今のところ一部に留まる。そんななか、15年以上も前から完全採用直結型のインターンシップを実施しているのがメルセデス・ベンツ日本だ。
同社人事部マネージャーの島田千恵子氏は、インターンシップ導入の経緯をこう語る。
「入社3年後の離職率が注目されていますが、当社もかつては一定数の離職者がいました。そこで、選考の段階でできる限り学生と業務内容の適正を見極め、ミスマッチを減らし、離職率を下げたいと考えました。また他社との人財獲得競争が厳しくなるなかで、学生にとってより魅力的で、独自性のある採用方法を打ち出したかった。こうした背景から、1999年にインターンシップを導入しました」

採用の大まかな流れは下図の通り。書類選考や一次選考を通過した学生だけがインターンシップに参加できる。部署別採用制度をとっており、インターンシップも部署別に行われる。そのため、学生は入社したら自分が所属することになる部署で、実際の業務を約2週間にわたり体験する。
「新入社員同然の扱いで、データ集計のような事務作業のほか、部内会議に出席して意見を求められたり、商談に同行したりします。サポートする社員も学生一人に対して一人をアサインするなど、受け入れ態勢もしっかり整えます」
期間中に課題を与えられ、それに対して学生は最終日にプレゼンテーションをして、終了となる。同社は2014年に最終面接を廃止しており、インターンシップが最終選考にあたる。最終判断は人事部ではなく、各部長が学生のインターンシップでの活動を総合的に判断し、採用・不採用を判定するのだ。

人事部 人事業務課
マネージャー
島田千恵子 氏
メルセデス・ベンツ日本の新卒採用選考プロセス(例) 広報 インターネット及び就職イベントを通じた新卒採用募集 関連部署から採用ニーズ収集 応募 エントリーシート(小論文)を通じた応募 6~7月締切 書類選考 エントリーシートによる選考 Webテスト 会社説明会・一次選考会 会社説明会 一次選考会(プレゼン等) 7月中 インターンシップ 約2週間のインターンシップ 8月上旬 内定 8月末

各部と人事部のコミュニケーションが重要

「実際の業務をやってもらうことで、面接では知りえない学生の資質や能力、性格、言ってしまえば"素"がわかります。2週間も一緒に仕事をすれば、学生も実際の業務内容や職場の雰囲気を深く理解することができ、企業、学生双方にメリットがあります」

インターンシップの導入で得た最大の成果は、離職者の大幅な減少だ。直近3年間では、グループ企業に転籍した1名を除き、新入社員の離職者はいない。
「離職者が多いと、戦力低下はもちろんのこと、教育に投資した労力、時間、資金すべてが大きな損失となります。インターンシップは離職者を減らしただけでなく、採用活動の重要性に対する意識が全社的に高まったのも、大きな成果でした」

また、学生のサポーターとなった先輩社員の会社に対する理解やエンゲージメントが養われるなど、社内人財の育成にもつながっている。その上、新入社員は顔合わせや簡単な部門研修を済ませた状態で入社してくるので、戦力になるのも早い。
「まず、どんな人財を採用したいのか。それを見極めるためにどのようなインターンシッププログラムを実施すべきか。各部署とのコミュニケーションが最も重要なことだと思います」と島田氏。各部署と人事部の綿密な連携が、インターンシップ成功のカギのようだ。

関連記事

新卒採用に一石を投じるか 日本のインターンシップ制度「新卒一括採用」によるミスマッチを軽減する方法として、インターンシップ制度が注目されている。日本のインターンシップの現状とは?(2013年発行) Vistas Adecco vol.35