仕事の未来 働き方 グローバル アンケート調査 世界25カ国調査からコロナ後を見据えたネクストノーマルの働き方を考察する

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2021.12.29

ニューノーマル時代の新しい働き方が定着しつつあり、これまでとは違った課題も顕在化している。2021年にAdecco Groupは、働き方についての大規模なグローバル調査を実施。25カ国14,800人に調査して分析した結果、パンデミック後の働き方について特長的な行動様式や考え方などの傾向があることがわかった。その5つのポイントをここで紹介しよう。

「新たな日常」に移行する際に、考慮すべき大切なポイント

Adecco Groupは2020年に続き、新型コロナウイルスのパンデミックで、仕事に対する姿勢や働き方がどう変化したかを調査した「“日常”の再定義:新たな時代の働き方とは(2021年版)」の結果を公表した。調査は世界25カ国のオフィスワーカー14,800人を対象に実施された。

新型コロナウイルス感染症の拡大と縮小が繰り返されるなかで、リモートワークとオフィス勤務を組み合わせたハイブリッドな働き方のスタイルが、従業員や経営陣からも支持を得ている。世界的な傾向としては、働き手はリモートワークとオフィス勤務を半々の割合で続けたいと考えており、「ネクストノーマルの働き方は、ハイブリット型ワークスタイル」ともいえそうだ。日本はリモートワークで働きたいと回答した割合が64%で、25カ国中1位であった。ハイブリッド勤務による柔軟な働き方は働き手にとっての新たな常識となりつつあり、子育て世代や障がいがある人など、さまざまなバックグラウンドを持つ人にとっても多様な働き方を選択できるメリットは大きい。ハイブリッド勤務の環境下において、懸念の一つになっているのが生産性である。調査結果からは、ハイブリッド勤務に移行しても生産性は低下していないと考える人の割合がグローバル平均では82%、日本は70%であった。さらに海外では時間単位で労働を評価することに疑問を感じる声も多い。グローバルでは働き手の73%が、企業は労働時間ではなく成果に基づいて業績を評価すべきだと答えている。

Point1オフィス&リモートのハイブリッド勤務モデルを望む

オフィス&リモートのハイブリッド勤務モデルを望む
  • 子どものいる人(51%)は、子どものいない人(42%)より、オフィスに行きたいと望んでいる。
  • 若年層ほどオフィス勤務を希望。Z世代(56%)、ミレニアル世代(48%)、X世代(46%)、団塊世代(44%)

一般的に回答者の年齢が低いほど、オフィスで過ごすことを望む傾向が強い。その要因としては、年齢の高い働き手は、これまでの経験からすでに自主性や知識を身につけているが、若い世代は新人研修や組織体制、対面での支援を必要としているためだと考えられる。

Point2生産性向上と成果主義。柔軟な働き方へと移行が進む

タイムマネジメントやワークライフバランスが向上したため、グローバルでは82%がハイブリッドな働き方でも生産性は低下しないと回答。労働時間ではなく、成果や結果で評価されることを求める働き手やリーダーが増えているが、グローバルと日本の結果には大きな差がある。

ただし日本は53%であり、成果主義の考え方においては差がある。柔軟な働き方への移行が進むなか、ハイブリッド勤務における「生産性向上と成果主義」は今まで以上に求められるだろう。

Point3バーンアウトが大きな懸念に

過去1年で、過労やバーンアウトを経験した割合

バーンアウトが大きな懸念に
2020年の調査と比較すると、より多くの人が自分のメンタルヘルスが悪化したと答えている。なかでも将来、会社発展の大きな責任を担う
若手リーダーのうち、54%がバーンアウトの経験があると報告している。

仕事の意義を再評価し働き手を次のステージに導く

課題として浮き彫りになったのがメンタルヘルスの低下だ。なかでも、若いリーダーの半数以上がバーンアウト(燃え尽き症候群)を経験しており、大きな懸念になっている。さらにマネージャーの51%が、従業員が過労やバーンアウトに陥っていないかを見極めるのは容易ではないと感じている。リモートワーク環境では従業員のメンタル面での問題は把握しづらいというデメリットがあり、部下の悩みに耳を傾けるためのコーチングや仕組みづくりなどの対処が急がれる。コロナ禍では、人間関係、モチベーション、企業文化に対する共感が低下している。またこうした問題において、リーダーと一般社員の見解には大きな隔たりがあり、断絶は会社の結束力低下への懸念となっている。例えば、リスキリングのための時間に関して、自社が効果的に投資していると考えているのは、一般社員が31%にとどまっているのに対して、リーダーは69%がサポートしていると考えている。やる気を高める能力開発やメンタルヘルスの把握など、ほかの項目においてもリーダーと一般社員の視点の乖離が大きく、働き手の分断を解消するためのリーダーシップの重要性が問われている。

point4リーダーと一般社員の見解には、大きな隔たりがある

自分の上司が期待通りまたは期待以上だったと回答した割合

リーダーと一般社員の見解には、大きな隔たりがある
世界的にもリーダーと一般社員の関係は悪化している。過去1年間にそれぞれの取り組みで、上司や雇用主が取った行動が、一般社員の
期待にどの程度一致したかの調査では、それぞれの考えに20〜40%の開きがある。

Point5パンデミック後に重視する働き方

パンデミック後の労働環境で重要だと考える要素[上位10項目]

パンデミック後に重視する働き方
パンデミック後の労働環境で重要だと考える要素は、「ワークライフバランス」「給与」「信頼」「雇用の安定」が働き手の基本的な要望の上位を占める「柔軟性」や「明確な目的意識」「評価」「学び・成長する機会」も重要。スキルとキャリア開発の機会は、仕事の再評価において優先される部分であり、個人や企業の将来性に大きく影響する。

最後に今回の調査では、多くの人が働き方を見直していることがわかった。パンデミック後に重視する働き方として、働き手の80%が、今後最も重要なこととして「ワークライフバランスを維持できること」を挙げている。そのほかの項目として、雇用の安定、主体性、企業文化、ウェルビーイング、能力開発の重要性も高い。働き手が抱く新たな期待をしっかり受け止め、企業はネクストノーマルへ向け新たな働き方について再評価を行う時期にきている。