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労働者派遣法「再改正」に向け、労使の実情を踏まえた議論がスタート

雇用・労働に関するニュース

昨年2012年に施行された改正労働者派遣法。その際、内容についての議論、見直しの検討を開始することなどの附帯決議が付されました。これを受け、「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」での議論、労使双方関係者へのヒアリングを経て、2013年8月20日に報告書がまとめられました。

報告書の基本的な考え方は以下の3点にまとめられます。

  1. 1.労働者派遣制度の労働力需給調整における役割を評価しながら、派遣労働者の保護及び雇用の安定等を積極的に図ること
  2. 2.派遣労働者のキャリアアップを推進すること
  3. 3.労使双方にとってわかりやすい制度とすること

この報告書の最も大きな論点は、「期間制限の在り方」。期間制限のない専門26業務を廃し、「業務」単位ではなく「人」単位で派遣期間の上限を考えていく、としたことです。もう一つの核となる論点は、派遣労働者のキャリア形成支援の必要性です。

今後、この報告書を土台として労働政策審議会の部会などでの議論が本格化すると思われますが、現時点では、具体的な何かが決まったというものでは決してありません。今後も継続してこの議論に注視し、皆さまにお伝えしてまいります。

Interview

事業規制から派遣労働者保護へ

労働政策研究・研修機構 統括研究員 濱口桂一郎さん

今回の報告書は、労働者派遣法を巡って、「本来はこうあるべきなのではないか」と主張してきた私の意見とほぼ同じ内容で議論されているように感じます。特に注目している点は、「専門26業務の在り方と常用代替防止という考え方」に関する議論です。

26業務は「正社員が行わない専門業務」という位置づけのため、『常用代替(派遣社員が正社員の雇用を代替する)』はない。だから期間制限をしない、というものです。しかし、その他の自由化業務は正社員の代替としての業務という範疇のため、原則1年、最長3年間の期間制限をする──。これが今までのロジックだったわけですが、そもそも26業務は「専門業務」としながらも、正社員が普通に行っている業務が含まれていました。

今回、「業務」単位ではなく「人」単位で派遣期間を定めるとし、3年を超す場合、労働者個人レベルでは、派遣元による雇用安定措置が求められるとしたことは、派遣労働者保護の観点から非常に望ましい方向性だと思います。

今回の報告書の一番大切な点は、「事業規制から派遣労働者保護へ」という転換が見られること。その意味で、EUの制度に近い発想です。ただEUの場合、労働者保護の中核にあるのは「同一労働同一賃金」ですが、仕事に基づいた賃金が決まっていない日本ではそれを実現するのは難しい。だから、派遣労働者保護の中核に雇用の安定を据え、待遇については、すべての労働者に配慮した集団的な枠組みで考えていく。これが日本の現状にふさわしい制度の在り方だと思います。

profile

1983年3月 東京大学法学部卒、83年4月労働省入省。その後、政策研究大学院大学教授、厚生労働省大臣官房付等を経て、08年8月より現職。

濱口桂一郎さん

VOL.34トピックス