働き方 仕事の未来 人財 育児休業制度の充実度は世界トップクラス 男性の意識改革がカギ キーワードで見る2023年の雇用・労働⑥産後パパ育休

  • このページをFacebookでシェアする
  • このページをTwitterでシェアする
  • このページをLinkedInでシェアする
2023.04.06
育児休業制度の充実度は世界トップクラス男性の意識改革がカギ キーワードで見る2023年の雇用・労働⑥産後パパ育休

新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われて丸3年が経過した。2023年に入って再び新規感染者数が過去最多を記録するなど、まだまだ収束が見通せない。加えて世界経済は分断を深め、先行き不透明な状態が続く。日本国内では物価高に加え、人手不足も大きな課題だ。これらを乗り越え、デジタル化や脱炭素などの大きな潮流に対応していくことが求められている。
同時に働き手の力を最大限に発揮させることが欠かせない。今後、経済活動が回復軌道に向かうなかで、日本型雇用の見直し、シニア層の雇用促進、外国人労働者の受け入れ拡大、フリーランスの保護など、これまで働き方改革の文脈で語られてきたテーマが再び活発に議論されていくことになりそうだ。
2023年の雇用・労働の動向を、キーワード別に専門家に語っていただいた。

2022年の法改正で大きな話題を集めたのが「産後パパ育休」だ。改正育児・介護休業法が10月に施行され、その目玉施策として、男性の育児休業取得促進のための出生時育児休業(通称: 産後パパ育休)が創設された。子の出生後、8週間以内に4週間まで取得できる。申し出の期限も原則休業の2週間前までとされた。産後育児の事情に合わせて、分割して2回取得することもできる。労使協定を事前に結んでおけば、休業中に就業することも可能だ。

図12022年10月からスタートした「産後パパ育休」を含む改正点

2022年10月からスタートした「産後パパ育休」を含む改正点

厚労省の調査によれば、女性の育児休業取得率は8割台で推移している一方、男性は2021年度で13.97%である。

「日本の育児・介護休業法の内容の充実ぶりは世界トップクラスといってよいでしょう。にもかかわらず日本の男性たちは長年、育児休業を取得してこなかった。本来、制度改正よりも男性の意識改革が大切なのですが、現実には難しい。産後パパ育休に『休業中に就業することができる』という一見不思議な規定が盛り込まれたのも『自分にしかできない仕事があるから休みにくい』といった男性の声をできる限り反映したうえで、意識改革のきっかけにしたいという政府の狙いがあるのでしょう。今後はテレワークやワーケーションのような発想を育児・介護休業法にも盛り込んで、より柔軟に仕事と育児のあり方を構築していけるとよいのではないかと考えます」(濱口氏)

Profile

濱口桂一郎氏
独立行政法人労働政策研究・研修機構 労働政策研究所長

東京大学法学部卒業。労働省(現・厚生労働省)入省。東京大学大学院法学政治学研究科附属比較法政国際センター客員教授、政策研究大学院大学教授などを経て現職。専門は労働法政策。近著に『働き方改革の世界史』(筑摩書房)。

濱口桂一郎氏