働き方 仕事の未来 人財 保護法制の議論が活発化 ギグワーカーの扱いにも注目 キーワードで見る2023年の雇用・労働⑦フリーランス保護

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2023.04.12
保護法制の議論が活発化 ギグワーカーの扱いにも注目 キーワードで見る2023年の雇用・労働⑦フリーランス保護

新型コロナウイルスの感染拡大に見舞われて丸3年が経過した。2023年に入って再び新規感染者数が過去最多を記録するなど、まだまだ収束が見通せない。加えて世界経済は分断を深め、先行き不透明な状態が続く。日本国内では物価高に加え、人手不足も大きな課題だ。これらを乗り越え、デジタル化や脱炭素などの大きな潮流に対応していくことが求められている。
同時に働き手の力を最大限に発揮させることが欠かせない。今後、経済活動が回復軌道に向かうなかで、日本型雇用の見直し、シニア層の雇用促進、外国人労働者の受け入れ拡大、フリーランスの保護など、これまで働き方改革の文脈で語られてきたテーマが再び活発に議論されていくことになりそうだ。
2023年の雇用・労働の動向を、キーワード別に専門家に語っていただいた。

組織に属さずに働くフリーランスが増えている。内閣官房の調査によれば、2020年時点で日本国内に462万人ものフリーランスがいるという。しかし、報酬の支払い遅延や不当な買いたたきなどのトラブルを防ぐ法的な枠組みがまだ整っていない。こうした状況を踏まえ、政府は22年からフリーランス保護法制の整備を検討しており、23年も活発な議論がなされると予想される。例えば現在の下請法では、発注者側が資本金1000万円以下の小規模な事業者の場合は取り締まりの対象に含まれない。現在検討されている新法案では、フリーランスを相手とする取引において、「資本金1000万円以下」の事業者が発注した場合も取り締まり対象となる見通しだ。

一方、料理配達などの単発の仕事をオンラインで受注するギグワーカーもフリーランスに位置づけられるが、東京都労働委員会は22年11月、料理配達の運営会社などに対し、配達員の労働組合と団体交渉に応じるよう命じた。ギグワーカーに対し、日本で初めて労働組合法上の「労働者」としての権利を認めたことになる。

「つまりフリーランス新法のように、フリーランスを独立した個人事業者として保護すべきという議論もあれば、企業に勤務する労働者と同等の存在として保護すべきという議論もあるわけです。一見矛盾するようですが、ギグワーカーも含め、フリーランスの方々を保護する道具立てが幅広く整備されていくのは、基本的には良いことです。多様な視点で議論を重ねていくことで、少しずつ妥当性のある規範がつくられていくのではないでしょうか」(濱口氏)

Profile

濱口桂一郎氏
独立行政法人労働政策研究・研修機構 労働政策研究所長

東京大学法学部卒業。労働省(現・厚生労働省)入省。東京大学大学院法学政治学研究科附属比較法政国際センター客員教授、政策研究大学院大学教授などを経て現職。専門は労働法政策。近著に『働き方改革の世界史』(筑摩書房)。

濱口桂一郎氏