VOL.44 特集:ニッポンの雇用と労働30年

キーワードで読み解く ニッポンの働き方

「働く」を取り巻く環境が今、大きく変化している。
では、過去30 年間で、日本の雇用と労働はどのように変わったのか?そして未来に向けて、どう変わっていくのか?
キーワードを挙げながら、“ニッポンの働き方”を読み解いていく。

昭和女子大学 グローバルビジネス学部 ビジネスデザイン学科 特命教授 福沢恵子氏
株式会社クラウドワークス 代表取締役兼CEO 吉田浩一郎氏

keyword1 ダイバーシティ

30年前は性別による雇用管理が行われ、男女で給与体系も異なっていた。子どもや高齢者など家族の中の誰かの面倒をみる"ケア役割"は女性が果たすものという認識があった。しかし現在では、性別にかかわりなく誰もがケア役割を引き受ける可能性があるという認識が定着してきたと、「女性と仕事」に詳しい昭和女子大学特命教授の福沢恵子氏は語る。「女性であることによって区別をされることがなくなった。それがこの30年間で一番の変化です」

管理職や経営層への女性登用の可能性も開かれてきた。「男女雇用機会均等法が施行されたのは1986年。そのときの第1期生が現在50代となり、実際に役員クラスに昇進する女性も出てきています」

さらに、89年の過去最低の出生率「1.57ショック」をきっかけに、若手の労働力が減っていくため、性別、年齢に関係なく働き手を増やすことが急務になった。「少子高齢化は社会に痛みと不安を与える問題ですが、解決するために、雇用・労働のあり方が変化していくのはよいことだと思います」。

一方、20世紀と21世紀とで明確に変わったのは、働き方の価値観だ。インターネットを活用したクラウドソーシング企業「クラウドワークス」社長の吉田浩一郎氏はこう語る。「20世紀は貨幣経済を中心とした高度経済成長があり、当時の働き方は、将来年収が増える、家が買えるという、いわば未来のために今を我慢して頑張るというものでした」

しかし、バブル経済の崩壊、長引く不況、終身雇用制度の崩れを経て、21世紀の働き方が変わった。「東日本大震災から、働いてお金を稼ぐことよりも、家族のため、あるいは地域のために働き、遠い未来より"今"を大切にするという価値観の変化が起きました」(吉田氏)

さらに今、外国人労働者を雇用する企業が着実に増えている。しかも、そのバックグラウンドは多様だ。「留学生として来日してそのまま日本で働く人、親の世代から日本に在住している人、仕事のために初めて日本に来た人など、さまざまなバックグラウンドをもつ外国人労働者がこれからますます増えていきます。外国人労働者は、日本人と同じ"働く人"。もはや文化摩擦は大きな問題ではなく、仕事を遂行する上で問題がなければ、外国人労働者ということを必要以上に気にすることはなくなるでしょう」(福沢氏)

【図1】日本の人口の推移
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