VOL.51 特集:人事評価制度の新たな潮流 個人と組織のパフォーマンスを最大化するマネジメント

Case Study チームワークと仕事の「インパクト」を評価日本マイクロソフト株式会社

他者の成功への貢献、他者の知見の活用が鍵

「マイクロソフトは新たなミッション『Empower every person and every organization on the planet to achieve more.(地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする)』のもと、全世界で変革を進めています。クラウドとデバイスを提供する会社として、お客様に価値を提供し続けるために、社員自身も大きく変革する必要があり、そのために人事制度の変革を行っています」

そう語るのは、日本マイクロソフト人事本部の道添未幸氏だ。そこで同社は、2014年9月に従来の人事考課制度「パフォーマンス・レビュー」を「パフォーマンス・ディベロップメント」へ刷新。その特徴は、①個人業績の強制分布によるレーティング(評価)の廃止、②チームワークと仕事の「インパクト」の重視、③頻度の高いフィードバックを通した成長の加速―となっている。「これからの時代に求められるパフォーマンスを『インパクト』と呼び、それは何かを入念に伝えていきました。インパクトとは、個人の成果、他者の成功への貢献、他者の知見の活用という3つが合わさって最大化されるパフォーマンスのこと。すなわち自部門を超え多くの関係者と協業を強めることでより大きな成果を出すということです」

日本マイクロソフト株式会社
人事本部 C&Bグループ
シニアマネージャー
道添未幸 氏

例えば、セミナー運営担当の場合、従来の制度では個人の目標である目標参加者数や来場者満足度を達成することで一定の評価を得られたが、新制度ではセミナーがその後どんな具体的ビジネスや価値を生み出したかという「インパクト」をより重視する。ケースによっては社内の営業、技術、経理、人事など他部門の人もうまく巻き込んでいくことが鍵となる。「チームワークを評価するために最適な制度になったといえます。多くの業務は、社内関係者を効果的に巻き込むことでより早く、より大きな成果を生み出せます。実際に、多くの部門を巻き込むことができる社員が新制度で高い評価を得ています。『インパクト』の内容は業務によってさまざまですが、社員は何が求められる『インパクト』かをよく理解し、マネージャーはそれを正しく評価できることが前提となります」

上司は他部署からも部下のフィードバックを集める

特徴の③は、目標管理制度のサイクルを早め、急速に変化するビジネス環境に適応し、同時に個人の成長も加速させるための仕組みを指している。「従来の目標管理制度における人事考課は、年度初めに目標を設定し、期末にその達成度を振り返るという年間サイクルでした。しかし新制度では、年間サイクルを廃止。ビジネスごとに、必要に応じて適切な期間を決めます。最低年に3回、多いと4回です。したがって、3~4カ月に1回、上司と部下がコネクトと呼ぶフォーマルな面談時間を取り、達成度・業務進捗状況や次の目標設定についてしっかり話し合います。また、これとは別に従来からある1カ月に一度、上司と部下がキャリアや仕事の方向性について話し合う1‐on‐1ミーティングも行っています」

新制度ではフィードバックの期間が短くなることに加え、他部門との協働が重要になるため、マネージャーは各署から部下に対するフィードバックを集める必要がある。そこで上司は、プロジェクトなどで関わった他メンバーの働きぶりを書き込むツールなども活用し、多方面からフィードバックを集め、部下の他者への貢献度合いや他者の知見の活用具合を総合的に判断し、評価していく。「他者に貢献する、他者の知見を活用することが"あるべき姿である"ということに対し、社員からの反応はとても良好です。制度導入1年目は手探りな部分もありましたが、3年目を迎え文化として浸透してきたと思います」

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