人財 組織 メンタルヘルス向上にマインドフルネスが有効な理由とその効果 ーセルフコンパッション醸成や心理的安全性構築にも有効ー

  • このページをFacebookでシェアする
  • このページをTwitterでシェアする
  • このページをLinkedInでシェアする
2019.09.02

ストレスフルな現代社会において、メンタルを健康に保ち生産性を高めて働くための手法として、米国IT企業をはじめ世界中で注目されているマインドフルネスについて、一般社団法人マインドフルリーダーシップ インスティテュート代表理事の荻野淳也氏に話を聞いた。

「誤解してほしくないのは、マインドフルネスは瞑想や座禅などを通して無心になることではないということです。マインドフルネスとは、『今』に注意を向け、気づいている状態です。

つまり自分の注意がどこに向いているのかを認知し、それをマネジメントできている状態のことです。『アテンション・マネジメント』ともいえるでしょう」と語るのは、マインドフルリーダーシップインスティテュート代表理事である荻野淳也氏だ。

荻野氏は、リーダーシップ開発や組織開発のコンサルタントとして活動するなかで、今の時代に有効な手段として、米国のIT企業をはじめ世界中の企業が、続々と能力開発プログラムに取り入れ始めていたマインドフルネスの可能性に着目した。

変化が激しく答えが見出しにくいVUCA時代では、管理職に求められていることがこれまで以上に高度化している。加えてストレスフルな現代社会において、メンタルを健康に保ち生産性を高めて働くためにはどうすればいいのか。試行錯誤した末にたどり着いた手法がマインドフルネスだった。

「今」に集中するトレーニングが大切

では、マインドフルネスとは一体どのようなものなのだろうか。そして、どのような効果を期待できるものなのだろうか。

「頭で理解するのではなく、体感することが重要」と語る荻野氏が、簡単に取り組める方法の一つとして勧めるのが、呼吸に注意を向ける「マインドフルネス瞑想」だ(図1参照)。

図1 呼吸法を取り入れたマインドフル瞑想

1 目を閉じた状態で深呼吸を行う 2 鼻で呼吸をする。空気の流れや出入りを意識する 3 続けることで変化する身体の感覚に意識を集中する 4 ①~③を数分間行った後、ゆっくり目を開ける。自分の頭、心、身体にどのような変化が起きたかを観察する

POINT 「ポイントは、自分の呼吸に好奇心を持って観察すること。無心になったり雑念を追い払うことが目的ではありません。もし、雑念が頭に湧いたら、雑念についても観察してみてください」(荻野氏)

実践すると「仕事がうまくいくか不安に思っている」「実はお腹の調子が悪い」など、普段気づかずにいた今の自分の感情や体の状態に意識がいく人が多い。それは、五感が研ぎ澄まされ、集中力と注意力が高まるためだ。

マインドフルネスはセルフコンパッションにも通じる

荻野氏は、5年間で約150社にマインドフルネス研修を実施。その効果として、「ネガティブな感情をコントロールできるようになった」「自分の価値観や使命感に気づくことができるようになった」などの自己認識が深ったという声が挙がっている。

さらに「周りの状況も気づけるようになり、部下にとって自分(上司)がどう行動すればベストなのかを判断できるようになった」という他者理解についても、一定の効果が表れているという。

「他者の苦しみに気づいて何とかしてあげたいという想いをコンパッションと呼びます。最近、『セルフコンパッション』が注目され始めたのも、自分へのコンパッションがないと他者へのコンパッションを実践できないため。そして、なぜコンパッションが今の組織に必要なのかというと、『心理的安全性』の重要性が高まっているためです」

心理的安全性を醸成するためには、周囲が安心感や安全感を感じているかの認知が必要だ。だからこそ、今の自分や周囲の状態に気づくマインドフルネスやコンパッションが重要なのだ。

「マインドフルネスによる自己認識力の向上が自身のリーダーシップや共感力の向上につながります。そのことがチームに心理的安全性を創り出す基盤となり、最終的に良いリーダーシップ、良いチームづくりという好循環を生んでいるのです」

マインドフルネスが脳にもたらす3つの効果

効果1 集中力・注意力の向上
何かに注意を向けると、前頭前皮質という脳の部位が活性化するという。ハーバード大学の心理学者、マシュー・キリングワース氏の研究結果によると、働いている時間のうち、今やっていることと違うことを考えている時間は47%もあるそうだ。つまり、仕事をしている姿勢だとしても、頭では違うことを考えている時間が、就業時間のうち、約半分あるということ。マインドフルネスの実践により、注意散漫な状態から意識して集中する状態を作ることが可能となる。
効果2 感情のマネジメント
不安や恐怖は、扁桃体という脳の部位が作用している。身の回りに脅威や危険を感じると扁桃体が反応し、怒りや恐怖、不安などの衝動的な感情を生み出す。また、扁桃体の反応によりコルチゾールなどのストレスホルモンが分泌されると、体は、呼吸が浅くなる、心拍が速くなる、緊張するなどの反応を示す。これがストレス状態である。マインドフルネスにより、扁桃体の反応が抑制され、衝動的な反応を抑えることができる。
効果3 自己認識力の高まり
自己認識力と関連があるのが、島皮質という身体感覚を司る脳の部位だ。島皮質が体で起こっている反応をキャッチしており、島皮質が活発であるほど、自己認識力も高まる。他者の身体感覚や感情の理解も島皮質が司っている。よって、島皮質が活性化されると他者に対する共感力が磨かれるともいえる。

Profile

荻野淳也氏
一般社団法人マインドフルリーダーシップ インスティテュート(MiLI)代表理事

慶應義塾大学卒。外資系コンサルティング会社勤務後、スタートアップ企業のIPO担当や、ヨガスタジオの取締役を経て、現職。マインドフルネスの手法を用いて、組織リーダーの変容を支援し、会社や社会の変革を図っている。グーグルで生まれた脳科学とマインドフルネスの能力開発メソッド「Search Inside Yourself(SIY)」の認定講師であり、日本でSIYプログラムを初めて開催。共著書に『世界のトップエリートが実践する集中力の鍛え方』(日本能率協会共著)、監修・解説として『マンガでわかるグーグルのマインドフルネス革命』(サンガ)などがある。