VOL.39 特集:新卒&若手社員の育成メソッド

Case Study1 難易度は「ギリギリ成功できるかどうか」の50%
実力主義で仕事を任せ、成長を促す株式会社ディー・エヌ・エー

「Mobage」ブランドでソーシャルゲームの世界を席巻しているディー・エヌ・エー(DeNA)。1999年の創設以来、実践し続けているのが「人は仕事で育つ」という理念だ。

同社の新卒採用グループのリーダーを務める石倉秀明氏は、仕事を任せる目安を「成功率50%ぐらい」と語る。

「社員個々の能力を見て“ギリギリ成功できるかどうか”という仕事にアサインします。仕事で社員の能力をストレッチするんです。それが成功したら、さらに難しい仕事を任せる。それを繰り返さないと、大きく成長はできません」

DeNAの新卒採用のページでは、守安功社長が若者たちに向けてメッセージを送っている。

社員の年次や役職には一切こだわらない。たとえば、同社の今年のサマーインターンシップを取り仕切るのは、入社1年目の社員だ。内容は、全国から選抜した学生たちと、事業になりそうなビジネスの種を本気で探すというもの。役員陣も参加し、真剣勝負の事業立案を練っていく。

「私から伝えたのは予算とおおよその日程だけ。何をどのように進行するか、そのためにどういったタスクが必要か、誰に何を配分するか、決めるのはすべてその新入社員です」

1年目から活躍し、2年目から部署のリーダーになった例や、同じく入社2年目に部下30人を抱える営業セクションのマネージャーになった例、あるいは内定者アルバイトという立場ながら一人で海外出張へ行き、商談をまとめてきた例など、そうしたケースは枚挙にいとまがないという。

「大切なのは“意思決定権も含めて任せる”ということ。新入社員が取り組む課題に対し、私たちから見れば何が正解か分かっているときもあります。でも、そこに向かって誘導するようなことはしません。若手社員が自分で考え、決断し、達成するためにやりきってこそ成長するのです」

意思決定権を阻害しない一方で、サポートは全力で行う。

「面談して状況を確認し、明らかに間違っているときはフォローに入ります。新卒社員に関しては今年から、現場のメンターと新卒との間にヒューマンリソース統括部(HR)が積極的にかかわることにしました。HRはその社員の直接の評価者ではないため、新卒が普段言えないことを吐露できるはけ口にもなれる。実践して数カ月ですが、育成の立ち上がりがスムーズになりました」

失敗しそうなときには「適切なギブアップ」を目指す。

「本人、上長と相談して、いかに失敗時のダメージを減らし、結果として最大の成果が出るようにするかを考えます。大前提として、1回失敗したら終わりという減点主義は取っておらず、再挑戦のチャンスはいくらでもあります」

成功すると、さらに難易度の高い仕事へのアサインがある。その繰り返しの先に前述のようなスピード出世がある。

「でも役職はあくまで担当する業務内容を表すものでしかありません。グレード体系、給与は役職と切り離されています。役職者でも、新たな現場の最前線で戦ってほしい人ならためらいなく動かす。むしろ、成果を出している“大黒柱”は抜きます。大黒柱を抜かれた部署では、その穴を埋めるべく全員が自覚を持つようになりますから」

現場のメンバーがマネージャーに昇格した場合、今度は自分自身で“人に任せる”という仕事に従事することになる。

「マネージャーの仕事は、メンバーを正しく評価し、正しく仕事をアサインすること。そこを間違うと、会社全体が機能しなくなるので、研修は行っています。半期に一度はマネージャー以上が全員集まって、『DeNAの組織をどう改善するか』といった大きなテーマについて話し合います。仕事での育成と将来への取り組みを繰り返し、挑戦する土壌や文化をつくっているのです」

株式会社ディー・エヌ・エー 経営企画本部 ヒューマンリソース統括部 人材開発部 新卒採用グループ グループリーダー 石倉秀明 氏
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