働き方 仕事の未来 組織 キーワードで見る2022年の雇用・労働

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2022.02.21
今後、より普及すると考えられる日本のジョブ型雇用の3類型 |キーワードで見る2022年の雇用・労働① ジョブ型雇用

新たな変異ウイルス「オミクロン型」の感染が急増するなど、コロナ禍の先行きはまだ予断を許さないものの、2022年の世界経済は本格的な回復軌道に向かうと見られる。
デジタル化とグローバル化に加え、カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現に向けた世界的な潮流が産業構造を大きく変えつつあり、企業には引き続きビジネスモデルの転換やイノベーション創出が求められていく。
DX(デジタル・トランスフォーメーション)やGX(グリーン・トランスフォーメーション)を支えるような人財の獲得・育成もますます重要になるだろう。
テレワークをはじめ、コロナ禍での働き方の変化を、生産性向上につなげる発想も欠かせない。個人にとっては、ビジネス環境が大きく変わるなかで、ライフキャリアを自律的に形成していく姿勢がますます求められる。
こうした状況を踏まえ、企業と個人が2022年を生き抜くうえでヒントになるような雇用・労働のキーワードについて、専門家に語っていただいた。

1:ジョブ型雇用

ジョブ型雇用とは、職務(ジョブ)をあらかじめ規定し、それに最適な人財と雇用契約を結ぶ雇用形態である。2020年以降、大手企業を中心に日本でもジョブ型の雇用制度を取り入れる企業が増えている。
20年7月からグループ内の主要各社の一部でジョブ型雇用の導入を進めているNTTはその代表例だ。このほか、新卒・既卒の若年層を対象に部署別にジョブ型採用を始めた企業や、デジタル人財のような専門人財の獲得のためにジョブ型雇用を取り入れている企業も出ている。
2022年以降も増えていくだろう。

一方で、濱口桂一郎氏は「ジョブ型雇用に対し、安易な期待は注意が必要だ」と指摘する。ジョブ型雇用・メンバーシップ型雇用という名称は、もともと同氏が提示したものだ。

「ジョブ型雇用が一種の流行語のようになってしまい、その主旨が誤解されているケースが見受けられます。例えば、ジョブ型雇用を『成果主義』と同一視する例が散見されます。しかしジョブ型雇用とは、職務定義書(ジョブディスクリプション)で職務内容や責任範囲、必要な能力などを細かく定め、その職務や能力に対して報酬が払われるというものです。つまりジョブ型雇用自体は、成果に応じて報酬が上がる仕組みなわけではない。正しく理解した上で、議論する必要があります」

専門人財雇用、シニア雇用を想定した年功序列制の打開策にも

日本企業がジョブ型雇用を取り入れる場合、具体的にどのようなケースが想定できるのだろうか。濱口氏によれば、大きく3つに整理できる。

1つ目は、無限定正社員の課題に対応するため、「限定正社員」の制度を取り入れるという方法だ。無限定正社員とは、会社に求められればどんな職種にも就き、就業規則の範囲内で何時まででも働き、転居を伴う配置転換(転勤)も受け入れる正社員のこと。日本の正社員の大半がこれに当てはまる。会社から求められる条件が厳しいので、育児や介護などをしながら無限定正社員として働くのは容易ではない。そこで働き方の選択肢を増やすため、職務や勤務地などを限定した「限定正社員」を導入する方法が考えられる。

「ジョブ型雇用は職務内容を限定した働き方なので、限定正社員の一種ともいえます。限定正社員は、働き方の多様性を生み出す手法だと捉えるべきです」

2つ目は、AI人財・DX人財など専門性の高い人財を獲得するため、職務をあらかじめ明確化し、さらに評価や報酬もほかの正社員とは別の枠組みにして雇用する方法だ。

「メンバーシップ型を維持しながら、ジョブ型雇用を一国二制度のような形で部分的に導入する方法は、多様な専門人財を獲得していく手段として、ありだと思います」

3つ目は、従来型の出世コース以外に、特定の職務に限定したキャリアを歩めるようにする方法だ。年功序列制が定着してきた日本では、昇給を重ねることで中高年社員の賃金が肥大化してしまうことが以前から問題視されてきた。

「日本のメンバーシップ型雇用は、新卒一括採用した若手社員たちを社内で教育していくと、やがてみんな一騎当千の活躍をするような社員に育ってくれるだろうという前提に立っていたわけです。しかし実際は、全員がそのような社員になるとは限らないし、管理職に不向きな人や、管理職を望まない人もいます。そこで、誰もが同じように出世コースを目指すのではなく、中堅社員になったら特定の専門職として働くことを選べるような制度を導入する方法が考えられます」

このように年功序列ではなく、職務に対して給与を支払う仕組みを導入しておけば、定年再雇用したシニア社員に対しても、それまでと同じ賃金水準を維持できる。年功序列制の打開策であるとともに、企業がシニア世代の就労を拡大していくうえでも有効な仕組みといえるだろう。

「いずれにせよ、現在のジョブ型雇用の議論は、こうした複数の要素が混同されてしまっている面があります。雇用に関する課題にどう対処していくのか、あくまで本質的な議論が重要なのです」

2:ライフキャリア

コロナ禍を機に多くの日本企業がテレワーク導入に踏み切り、すでに当たり前の働き方として定着しつつある。今後はテレワークを起点に、働き方の質をどれだけ高められるかが重要になると日本総合研究所の副理事長、山田久氏は指摘する。

「社内のコミュニケーション機会が減るなど課題も見えてきましたが、仮に感染が収束しても、従業員全員のオフィス出勤を前提とした働き方に戻るとは考えにくい。今後はテレワークの課題に対処しながら、どれだけ生産的で快適な働き方を構築できるかを考えるべき段階に入っていくと思います。特に日本の場合、人口減少に伴い労働力が減っていくのは確実で、女性活躍の推進はもちろんのこと、シニア層なども含めてあらゆる人々にそれぞれ最も適した働き方で活躍してもらうことが不可欠ですから」

人生の時間の使い方を、より主体的に考えていくことが重要に

テレワークの普及は、われわれにとって働く場所や時間の柔軟性を大幅に高めることとなった。

2021年にAdecco Group が世界25ヵ国14,800人を対象に実施した働き方に関するグローバル調査では、コロナ禍の1年間で、約50%が「ワークライフバランスが向上した」という働き方に対して前向きな意見もある。さらに、働き手の大多数(76%)は、時間が柔軟なこの働き方を続けたいと回答(図1参照)。特に育児や介護を担う人にとっての利点は大きい。これは大きな変化だが、今後テレワークを本当の意味で社会に浸透させ、個人の活躍を引き出すには、働く時間や生活時間に対する考え方を見直すことが欠かせないと山田氏は指摘する。

図1 テレワークによる働く意識の変化

テレワークによる働く意識の変化
パンデミックの後も、柔軟な働き方へのサポートが重要と思う人の割合(%)

出典:Adecco Grpup 25カ国調査
「“日常”の再定義 新たな時代の働き方とは(2021年版)」より

「以前から『ワークライフバランス』という言葉がありますが、日本では単に労働時間を短縮して、余暇時間を増やすという発想にとどまりがちでした。最近では男女ともに自宅で家事・育児をしながら仕事をするといった人が増え、ワークのなかにもライフがあり、ライフのなかにもワークがあるという状態になっています。今後はライフとワーク、両者を切り分けるのではなく、自分なりに最適に組み合わせることによって、それぞれを充実させていく発想が重要になります」

このようにワークライフバランスをより深化させていくためのキーワードとして山田氏が挙げるのが「ライフパズル」だ。男女平等や社会福祉の考え方が深く浸透している北欧・スウェーデンで提唱された概念である。仕事や家事・育児、余暇、趣味、地域貢献など、あらゆる要素を自分の人生を形成するパズルのピースだと捉え、人生のステージに合わせて最適に組み合わせていくという考え方だ。もともとスウェーデンは人口規模が小さく、戦後には人口減少に見舞われるリスクがあった。経済成長を維持するために、あらゆる国民が生産性の高い働き方を実践していく必要があったのだという。

「単なるスローガンではなく、例えば育児休暇を取得しない男性は税制優遇をフルで受けられないようにするなど、『ライフパズル』の実践につながるような政策を政府が積極的に導入しています。この結果、今では働く男女がともに、仕事と家事・育児などの時間を等しく大切にする文化が根づいています」

これまでの日本では、生活の時間よりも働く時間を優先させ、キャリアのあり方も企業任せにしてしまう傾向が強かった。しかし当然ながら、自分のライフキャリアについて、主体性を持って考えていくことは重要だ。

「ライフパズルにおいて、どのピースが大切なのかは、人それぞれ違うはず。大切なのは、自分の人生における時間の使い方や配分を、個人が主体的・意識的に考えること。働く時間や生活時間の主導権を、『企業』から『個人』に回帰させることこそが、テレワークの本質だと私は考えています。働く個人は今後、自分の人生の時間についての意識をぜひ高めていただきたいです。また企業側も、従業員のライフパズルの実践を応援するような人事制度やキャリア支援の枠組みを構築していってほしいと思います」

3:リスキリング

ネクストノーマルに向けて、あらゆる企業がビジネスモデルの転換や新たな事業創造に取り組むなかで、引き続き「リスキリング」も重要なキーワードだ。「学び直し」と訳されることが多いが、リスキリングの対象は「学び一般」ではなく、環境変化に対応し、より付加価値の高い仕事へシフトしていけるような「具体的なビジネススキルの習得」を指すことが多い。働く個人にとってリスキリングが大切なのはいうまでもないが、企業側もそのための環境を積極的に整えていく姿勢が欠かせない。

「コロナ禍以降、テレワークの常態化や副業・複業の解禁、ジョブ型雇用へのシフトなどにより、企業・組織に対する“遠心力”が働き、社員のエンゲージメントが低下するという課題が生まれています。企業としては、以前の状態に戻そうとするのではなく、社員に対する新しい求心力を生み出す工夫が必要です。その重要な手段の1つがリスキリングをはじめとする人財育成の強化です」(山田氏)

これまで日本企業は、人財育成の手段としてOJTを重視してきたが、自社のビジネスモデルの転換に対応できるようなスキルをOJTによって習得することはできない。今後は大学なども含めて、外部機関を活用した人財育成の取り組みが必要になる。「外部機関での学びについて、以前から『リカレント教育』などの言葉が声高にうたわれていましたが、日本ではあまり目立った成果は出ていません。これは社員たちが企業外で学んできたスキルや知見を、企業があまり評価してこなかったことが大きいと思います。今後、本気で人財育成に取り組むなら、企業自身の意識改革が最も重要でしょう」(濱口氏)

4:外国人労働者

外国人労働者の受け入れは、2022年の雇用・労働におけるホットなテーマとなりそうだ。感染防止のためのいわゆる「水際対策」として、政府が外国人の新規入国を停止したことなどから、現状では外国人労働者の受け入れは滞っている。しかし前述のように、コロナ禍に直面しても日本の有効求人倍率は1を下回ることはなかった。

2022年の経済活動の再開に伴って、人手不足は深刻化する可能性が高く、外国人労働者をどう確保していくかは企業にとって重要な課題になる。

2019年4月には改正出入国管理法(入管法)が施行され、人手不足が顕著な業種を中心に外国人労働者の受け入れを増やすため、「特定技能」という在留資格が新設された。最長5年の「1号」と、在留期間を更新することで事実上無期限で就労でき、家族も帯同できる「2号」という2種類の在留資格がある。2号は熟練技能を持つ労働者が対象で、現状では業種が「建設」「造船・舶用工業」2分野に限られる(図2参照)。

図2外国人労働者 特定技能2号の業種拡大

    滞在期間・家族帯同 対象業種
特定技能 2号 在留期間の上限なし
家族帯同可能
建設、造船・舶用工業
1号 最長5年
家族帯同不可
介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電子・電気情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業

出典:法務省「特定技能制度」より

「一部の報道によれば、政府は現在、2号の対象業種を大幅に拡大することを検討している模様です。すでに外国人抜きでは成り立たない業種は数多くあり、『最長5年で帰国されてしまうのは困る』というのが実態だと思います。これまでは『技能実習』と『特定技能1号』までが中心でしたが、中長期的には外国人の雇用形態の主力は2号に移行していくでしょう」(濱口氏)

ただし、日本の外国人労働者の受け入れには課題が少なくない。

「今後コロナ感染が収束し、新規入国が再開しても、外国人たちはすぐには日本に来てはくれないでしょう。今後も緊急事態宣言が繰り返されると、せっかく入国しても仕事が止まってしまう恐れがあるのも一因ですが、それだけではありません。最大の問題は、グローバル視点で見たときに、働き先としての日本の魅力が相対的に下がっていることです」(山田氏)

日本では、外国人労働者には低賃金で単純労働を任せたいという考えが根強くある。しかし、東南アジアをはじめとする新興国の賃金水準が上昇しているなか、人件費コスト削減のための外国人就労を想定してきた日本企業は発想の転換が必要だ。

前述の在留資格の条件緩和のような政策的な対応だけでなく、企業や自治体も巻き込んだ受け入れ環境の整備が求められる。言語の壁を取り除くための日本語教育の推進や、医療機関における外国人への円滑な対応など、課題は多い。

「技能をしっかり身につけた優れた外国人労働者たちに、家族と一緒に安心して日本で暮らしてもらえるにはどうすべきか。政府・企業・地域社会にとっての大きなテーマになっていくのではないでしょうか」(山田氏)

5:GX(グリーン・トランスフォーメーション)

「脱炭素」の機運が世界的に高まるなか、日本政府は2020年10月、2050年に温室効果ガス排出を実質ゼロ(カーボンニュートラル)とする目標を発表した。これを受け、環境負荷の低減や社会課題の解決を主軸とした事業変革を目指す企業が日本でも増えているが、「2050年カーボンニュートラル」を達成するためのハードルは極めて高い。社会・経済システムを抜本的に見直し、産業活動や消費行動、生活様式などあらゆる側面で環境負荷の低減を図り、なおかつ経済成長を目指していく必要があるからだ。

サステナブルな社会の構築と経済成長の同時達成を目指す

企業が取り組む上でのヒントとなりそうなキーワードが、GX(グリーン・トランスフォーメーション)だ。これまでのような、企業が社会貢献活動の一環として環境課題に取り組むのではなく、脱炭素を軸に企業経営の刷新を目指すことを意味している。最近では日本企業の間でも専門の推進組織を立ち上げるなど、GX推進に取り組む例が増えている。

GX推進を提唱するデロイト トーマツ グループのパートナー 片桐豪志氏は次のように語る。「デロイト トーマツ グループでは、GXを『カーボンニュートラルと経済成長、その手段としての資源循環を同時達成し、環境負荷を最小化した世界に変えていくこと』と定義しています。以前から環境ビジネスを手がける企業は数多くありましたが、今求められているのは、一企業の取り組みを超えて、製造・輸送・販売・利用・廃棄といったサプライチェーンのあらゆる段階で起こる外部不経済を明らかにして、それに対応していくことです。より包括的な取り組みであり、今まで以上に企業の本気度が問われることになります」

経済が成熟化するなか、企業がイノベーション創出を目指すうえでもGXは有効だと片桐氏は付け加える。

「コロナ禍以降、成長の契機としてDX(デジタル・トランスフォーメーション)がこれまで以上に注目されていますが、実際にはデジタル技術を活用したビジネスプロセスの効率化だけにとどまり、新たな価値創造にはなかなか結びついていないのが現状です。そんななか、『20世紀型の大量生産・大量消費社会から脱却し、地球規模の社会課題を解決するためにはどんなトランスフォーメーション(変革)が必要か?』という視点に立つことは、イノベーションを考えるうえでのヒントになります。脱炭素という社会課題を解決しながらイノベーションを生み出すようなトランスフォーメーション、それが『GX』だと私は考えています」

GXの一例として挙げられるのが、「ダイレクト・エア・キャプチャー(DAC)」を社会実装する試みだ。DACとは、二酸化炭素(CO2)を吸収しやすい化合物や、CO2だけを通す高分子薄膜などを活用し、大気中からCO2を直接回収する技術である。これが実現すれば、既存の経済活動を制約することなく温室効果ガスの濃度だけを減らすことが可能になる。回収後の濃縮CO2の用途や販路を開拓する必要もあり、実用化までのハードルは高いが、すでに各国の企業などが取り組んでおり、期待が集まっている。

求められるリーダーシップと高いコミュニケーション能力

DXにおいてデジタル人財が欠かせないのと同様、ここでもカギとなるのは人財であると片桐氏は話す。

「脱炭素は産業界が避けて通れないグローバルな課題ですが、GXのプロジェクトはさまざまなステークホルダーが協力し合わなければ成功しません。業種にかかわらず、今後はあらゆる企業でGXの知見やリテラシーを備えた人財が求められていくでしょう」

では、GX人財とはどんな人財像なのだろうか。まず求められる基本的な資質として、「グリーン・スキル」がある。カーボンニュートラルにつながる科学原理に対する知見や、それを実用の形にして課題解決につなげるテクノロジーのリテラシーといった、脱炭素社会を実現・維持するために必要な知識や技術などのことだ。

さらに、それ以上に重要なのはリーダーシップやコミュニケーション能力といった、プロジェクトマネジメントの資質だと片桐氏は話す。

「タテ割り組織でバラバラにデジタル化を進めてもDXにならないのと同様に、GX推進でも部門横断的な連携が欠かせません。製造・開発などの部門はもちろん、経理・総務・法務といった間接部門も巻き込み、既存のビジネスを社会的・環境的価値を軸に再構築することが求められます。そのためには異なる専門性を持った人や組織を結びつけ、一つのプロジェクトとして機能させる人材が絶対的に必要です」

社内だけでなく、外部との連携も重要だ。前述のDACの例のように、実用化するには、濃縮CO2の販路を確立するためのマーケティングを行う企業や、資金調達を担う機関投資家や金融機関、さらに地域住民などの協力が欠かせないからだ(図3)。

図3各段階での課題とGX人財の必要性

各段階での課題とGX人財の必要性 各段階での課題とGX人財の必要性

出典:デロイト トーマツ グループの資料を基に作成

高い環境意識を原動力に粘り強く取り組めるスキル

GXはDXと違い、かなり長期にわたる時間軸で取り組むことが求められるのが特徴だ。DXの場合なら最小限の機能を備えた製品・サービスをまず提供し、市場の反応を見ながら柔軟に仕様変更していくアジャイル型の開発手法が有効だといわれる。これに対しGXの場合は、多様な技術情報を収集分析し、カーボンニュートラルに資するかどうか研究や実証を重ねて、実用化までのロードマップを描いていく。自治体や地域住民などの協力を得て社会に実装していくプロセスも必要であり、プロジェクト実現には長期間での粘り強い取り組みが求められる。

GX人財とは、サイエンスとテクノロジーに精通したうえで、多数のステークホルダーが関わる長期プロジェクトを遂行できるビジネス能力を持った「ハイブリッド人財」を指すのだと片桐氏は話す(図4)。

図4GX人財に求められるスキル

GX人財に求められるスキル GX人財に求められるスキル

「ハイブリッド人財というと言葉の響きは良いですが、実際は社内外のステークホルダーとの極めて地道な交渉・説得が業務の大半を占めます。大変な役割ですが、日本では多くの企業がタテ割り組織なので、部門間の難しい調整役を務めている人財は必ずいるはずです。今まではあまり注目されにくい資質・スキルだったかもしれませんが、今後はそういう方々がGX人財として活躍していくのかもしれません」

もう1つ、GX人財に欠かせないのが「環境意識の高さ」だ。

「脱炭素が大切だと頭ではわかっていても、複雑な利害調整を経てGXを成功に導くのは大変な作業です。会社のため、報酬のためといった動機づけを超えて、環境に対する明確な意識や高い志が原動力になります。GX人財を育成する過程では、社内で深く対話し、自分の環境意識について明確化するような機会も重要になると思います」

Profile

山田久氏
日本総合研究所 副理事長

京都大学経済学部卒業後、1987年に住友銀行(現・三井住友銀行)入行。経済調査部、日本経済研究センター出向を経て、1993年に日本総合研究所調査部出向。調査部長兼チーフエコノミストなどを経て2019年より現職。2015年、京都大学博士(経済学)。著書に『賃上げ立国論』(日本経済新聞出版)など多数。

山田久氏

濱口桂一郎氏
独立行政法人労働政策研究・研修機構労働政策研究所長

東京大学法学部卒業。労働省(現厚生労働省)入省。
東京大学大学院法学政治学研究科附属比較法政国際センター客員教授、政策研究大学院大学教授などを経て現職。専門は労働法政策。近著に『働き方改革の世界史』(筑摩書房)。

濱口桂一郎氏

片桐豪志氏
デロイト トーマツ グループ パートナー

総合シンクタンクなどを経て現職。科学技術イノベーションの社会実装を支援するDeloitte Tohmatsu Science and Technologyを推進。電力、海外インフラ輸出、ESG投資・SDGs、地方創生・産業振興などの幅広い分野で大規模プロジェクトの企画立案、戦略策定、実行支援といったコンサルティングサービスを提供。著書に「事業プロデューサーという呼び水」(共著、静岡新聞社)など。

片桐豪志氏